天空からの幸。


  • 長野と群馬県境がホテル内にあることでも有名な渋峠ホテル

  • 奥さんの俊子さんと。ごく自然に腕を組んでくれた

「志賀高原」の矜持、そして明暗

我々はその日、少しばかり緊張していた。これから会う方は「長野県スキー連盟」、「志賀高原スキークラブ」の元会長。権威を持った人物である。しかし駐車場で待っていた児玉幹夫さんは、人なつこい笑顔で迎えてくれた。そしてご自身が経営する渋峠ホテルまで、自ら雪上車を運転して運んでくれたのである。
渋峠ホテルは、児玉さんの父親が戦後始めたホテルだ。志賀高原ホテルが進駐軍に接収され、丸池に本州初のスキーリフトができ、本格的なスキーリゾートの歴史が始まった。もともと雪質の良さから「東洋のサンモリッツ」と呼ばれていた志賀エリア。地元企業も本腰を入れて、スキー場開発に乗り出した。こうして、日本でも有数の規模のスキーエリアができあがり、「志賀高原」ブランドが確立する。
児玉さんも高校時代までは競技スキーに打ち込んでいた。その後はホテル経営のかたわら、志賀高原を舞台としたさまざまなレースやイベントを開催してきた。長野県スキー連盟の副会長を12年間。冬季長野オリンピックはじめ、世界レベルの大会も数多く手がけた。その間の尽力が評価され、2010年から2012年まで会長職を務める。しかしその頃、スキー人気は既に下降していた。
「スキーはカネがかかるという意識、ゲームやネットなど他の娯楽が普及したこと。それから、スキー場ができ過ぎたことも大きいです。自然淘汰なんでしょうね」。半ば諦めにも似た言葉が口をつく。後継者問題もある。旅館の後を継ぐべき世代が、そもそもスキー離れを起こしているという。この事態をどう打開するか、模索している。どうやらヒントは、「空」にありそうだ。

恵みは空からやってくる

スキーやスノーボード以外で志賀高原にやってくる目的を洗い出してみると、「写真撮影」が多いことに気付く。特に、渋峠はその割合が多い。
「今年の初日の出では『太陽柱』が見られたんで、お客さんに喜んでもらいましたよ」と、息子の英之さんが教えてくれた。太陽柱は、「Sun Pillar」と言う。日の出・日の入り時、太陽の上下に光が長く伸びて見える現象だ。氷点下15度以下になるとダイヤモンドダストに反射してさらに幻想的になる。もちろん、無雪期にもネイチャー・フォトを狙う写真ファンが多く訪れる。さらに、天体観測ファンの人気も高い。四季を通じて天の川は見事な輝きで空を流れているし、2001年にはオーロラも観測されたという。考えてみれば、これらの「財産」はいずれも「空」と関係している。標高が高いエリアであること、大気が澄んでいることは大きなアドバンテージだ。天文はもちろんのこと、雪だって空からの恵みだ。これらを、もっと活かせないだろうか。
「アイデアはいくらでもあります」と、児玉さんは言う。例えば2013年、横手山山頂に「スターバックス」がオープンした。「日本で一番高い所にあるスタバ」として話題になり、今でも客足はいい。「空への近さ」が売り物だ。「あとは、そういったアイデアを若い層が実行に移してくれれば」と児玉さんは二世世代の活性化を望む。世代間のやり取りを密に行うことが、これからの課題だ。
「志賀高原」というスキーエリアが、新しい方向へターンしようとしている。


  • 暖炉の横には、博物館のように歴史的なスキーが並ぶ

  • 2018年初日の出で現れた「太陽柱」。気温が低いほど美しい
    (撮影:児玉英之)

そのほかの達人達をみる

  • 郷土料理研究会会長 竹井孝子 野沢温泉村
  • 竹内農園 竹内昭芳 木島平村
  • マタギ 福原和人 栄村
  • サンクゼール代表取締役 久世良三 飯綱町
  • 小林一茶、七代目子孫 小林重弥 信濃町
  • 日本きのこマイスター協会 前澤憲雄 中野市
  • 人形作家 高橋まゆみ 飯山市
  • ネイチャーガイド 敷根俊一 妙高市
  • 渋峠ホテル 児玉幹夫 山ノ内町

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