土着への慈愛。


  • 農道で見かけたお婆ちゃん、川口きみ江さんと話し込む

  • 表情は誇張されているが、細部や衣装にはとことんこだわる

人形は自分への癒しだった

とても美しいひとだ。自然の厳しさに晒されながら健気に生きる人たちへの、限りない慈しみがこのひとの美しさににじみ出ている。人形たちはまんまとこのひとの美しさにしてやられて、みんな元気だ。天を仰ぎ、拝み、孫に頬ずりし、夫婦で笑い合い……。高橋まゆみさんの作る人形は、お年寄りの表情の博覧会だ。歯のあまり残っていなさそうな口元をクシャッとさせ、笑ったり困ったりむっつりしたり。人形たちが置かれているのは、農村風景や古い農家。日本人なら誰もが「原風景」と感じてしまう舞台設定だ。
「長野市内の核家族家庭で育ったから、結婚して農家へ来たときすごく新鮮だったんです」。飯山市の「高橋まゆみ人形館」で、自身の作品に囲まれながら言う。しかし慣れない環境の中、どうしても戸惑うことも出てきた。そこへ、人形が助け船を出してくれた。趣味で作り始めていた人形のモチーフを、周囲に普通にいるお年寄りに。最初に作ったお婆さんの人形を見ていたとき、「人形が何か返してくれた」と感じた。辛かった気持ちがほぐれていった。農村の中で悩んでいた自分を、農村のお婆さんが癒してくれたのだ。皮肉なようだが、それがきっかけとなって今の作風を生んだ。
高橋さんの作品の中には、認知症を患っている人形も混じっている。これには自身の体験も活かされた。「介護は大変なだけではないんです。無垢な笑顔に助けられてもいるんですから」と、振り返る。作品を見て、ボロボロと涙を流す人も多い。心が浄化されるのだろうか。
「人助けをしちゃってるかな」と、高橋さんは照れたように言う。

土地と人へ、言葉に換えた慈しみ

7年にわたり、全国を巡回して人形展を開いた。地域によって反応に差があったという。東北などでは飯山と同じく親近感を持たれ、都会では「いつの時代なの?」と訊かれた。昔の人形だと思わ れるようだ。通底しているのは、親しみと懐かしさと郷愁。人形たちは、高橋さんの慈愛を全国に発信し、戻ってきた。「巡回展が終わり、私の『たが』が外れた気がします。今までとは違うことへ挑戦したいとも思います」と、心境を語る。「できなかったこと」への挑戦。難しいモチーフであればあるほど、気持ちがかき立てられる。漁村はどうだろう。南国はどうだろう。衣装や舞台背景は変わるが、おそらく人形の表情は同じだ。なぜなら、その土地へ足を運び、土地の人たちに融け込むことが彼女の創作の第一歩だからだ。土地の自然と生活が皺に刻まれた、漁村のお爺ちゃんや南国のお婆ちゃん。高橋さんの網膜と記憶に残るエッセンスは変わりようがない。
「アジアの僻地、少数民族の村―そんなところへも行きたい」。外国人をモチーフにした人形を見てみたいと、誰もが思うだろう。信越と同じ、慈愛のまなざしが人形を創る。そして、海外でもきっと人気となるに違いない。想像すると、何だかとても誇らしい気持ちになる。何と言っても、ルーツはこの地にあるのだから。

  • 朝の体操
  • ©高橋まゆみ人形館

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